2007年05月26日

西大寺の変05。(奈良市)

 前回は、西大寺にいくつかある対称軸がどんどん、東へ移動しながら重なっていくというお話(移動する対称軸)をしました。今回はこのことに着目しながら西大寺空間全体のお話をしたいと思います。そうです。いよいよ佳境です。

zentai-garan.jpg

 さて、上の図が西大寺の境内全体の案内図です。とうとう全貌をあらわしやがりました(っていうよりこっちが勝手にちびちびと出し惜しみしてただけなんやけど)。ただ、これを、ぼんやり見てても仕方ないので、「移動する対称軸」という観点からこれを読みといていきましょう。

01-taisyo-a+.jpg

 まずは対称A空間です。創建時の対称軸です。でも現在西塔跡が不在なため、この軸を体感することはできません。

02-taisyo-b+.jpg

 次に対称B空間です。東塔跡を中核に据えた空間です。

03taisyo-c+.jpg

 そして、対称C空間。前回紹介したものです。そしてこれを重ね合わせたものとして全体を見てみます。

04-taisyo-kasane+.jpg

 このようにA〜Cの対称空間は少しずつずれて重なりあいながら、東進していき、その結果として全体空間が形成されるのです。さて、これらは全て南北軸を対称軸とする空間ですが、こんなように何本も対称軸があるとそれぞれの軸の空間的な主張が相殺して、弱くなってしまい、その結果南北軸自体も弱体化してしまいます。そのためか、現在の西大寺では南北と直交する東西軸の方が主軸となっています。図解すると以下のようです。

 06-tozaikukan+.jpg

 四王堂の東に東門があり、そこがメインアプローチとなります。図の赤い矢印が人の動きです。東門をくぐって参道を西へと進み、四王堂、本堂を横に見つつ西へ西へと進みます(東進する対称軸と逆で先祖帰りのような経路)。その視線は東を向いて建つ愛染堂(図の赤い四角)で受け止められ、西進はここでストップします。ですがここらあたりの中核を占める東塔跡が、あたかもロータリーのような回転を誘導する装置として機能し、ひとびとは東塔まわりを回転して本堂南門から西大寺を去るか、一周まわってもとの道を逆にたどるかするのです。

 そして愛染堂によって西進がとめられるため、古代の軸(西塔と東塔が形成する対称軸)は完全に見えなくなり抹殺されてしまっています。

 対称空間をいくつもずらしながら、重ねあわせることで南北軸もそれぞれの対称空間も微弱になり、それにともなって個々の建築の存在感も薄くなります。

32-kidan.jpg

 この写真を見ても、わかるように個々の建築はその大小に関わらず、存在感が薄く、ひとびとが歩く際、その行動にリズムとアクセントを与える程度の位置まで落ちてしまってます。逆にひとが具体的に行動する参道空間が妙に際立ちます。図解すると以下のような感じです。

07-32void+.jpg

 結局対称空間も個々の建築も後退して、図の赤いヴォイドのみが残るような空間となってしまうのです。実際、西大寺は探訪する人が案外多く、いつもにぎわっているのですが、特に何を見るでもなく、ずるずると東西方向を歩いて東塔まわりをうろうろして、そして帰っていく風景をよく目にします。

toto.jpg

 創建時において彫刻的な威容を誇った東塔。現在中核にあるように見せかけて、その上部構造をうしなった東等跡は、実はもはや回転運動を誘発するロータリーになっちゃったわけです。嗚呼。ある意味、緑の仏像に化した西塔跡よりきついかもしれないですね。

 さて、長〜く続いた「西大寺の変」。実は書き始めたときから、ここまで考察できていたわけではありませんでした。連載続けているうちに考えを進めることになり、ここに至ったというのが本音です。

 1、対称空間をすこしずつずらしながら重ね合わせいくこと。
 2、その結果それに直交する軸線が発生し強化されること。
 3、逆にそれぞれの対称空間やそれを形成する個々の建築が微弱化し、行動にリ  
   ズムを与える役割程度の存在へと変化すること。
 4、その結果、純粋に行動空間たるヴォイドが発生すること。

 これはまさに、ひとつの「造形システム-かたちのしくみ」です。これはもう、「赤い窓」超えて、「Dの扉」へ昇格なネタです。

 とっても個人的なよろこびで申し訳ないですが、やってよかった!復帰連載。読んでいただいたみなさま、おつきあいいただけて本当にありがとうございました。

 Dの赤い所長(紺色のTシャツ着てるとクレームのついた) 渡辺菊眞
posted by 遷都1297年記念事業協会 at 20:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 平城京の風景 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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